地理研究部5 大地形-2・地図の歴史
穂高「今日は新規造山帯について見ていこう。」
美咲「それ、環太平洋造山帯とアルプスヒマラヤ造山帯しかないやん。」
穂高「確かにそうなんだけど、どんな特徴がある?」
美咲「アラブ・ベネズエラでは、石油が取れる。」
穂高「それは本当の話なんだが、最近の地理学ではそれと新規造山帯の間に相関がないことがわかってきた。けれど、高校の地理では共通テストやら2次試験を解く分にはなんら問題がない。」
美咲「へえ、どんな地形なの、それは。」
穂高「背斜っていうて、以下の図のように古い地層が中央部にきていることを指す。」
美咲「なるほどね、よくわかった。ありがとう。あと、『地図の歴史の話をしてほしいんだけど』って私の友達が言ってた。」
穂高「では、それについて喋ることにしよう。ここに示したのは、世界最古の地図。」
美咲「これ、今のイラクにあったバビロニアの地図。粘土板に書かれている。」
穂高「今のトルコ東部にあったアッカドやエラムのあたりが書いてあるそうだ。」
美咲「で、外側の円盤は?」
穂高「ティグリス川、ユーフラテス川、死海と考えられている。」
美咲「なるほどね、その当時は世界がそのくらい狭かったんだね。」
穂高「おい、当時にしては最高の出来だと思うぞ。日本なんてまだ縄文時代だぞ、美咲。」
美咲「あ、そうだった。その後に西洋に伝わって、エラトステネスの地球の大きさの測定に繋がるのね。緯度の差による太陽の高度差を利用して測ったの。」
穂高「その通り。彼は、このような地図を残した。ギリシャやトルコ、イタリア、エジプトなどは割とマシで、黒海やカスピ海が内海であることも当たっているのだが、ドナウ川はハズレである。」
美咲「今のインドやイギリスもある。アフリカは現在でいう南アが書いてあるの?」
穂高「前者は合ってるが、後者は不正解。サハラ砂漠までと考えられる。そりゃ縦貫しようとしたら倒れるわ。」
美咲「ギリシャの時代が終わって、ローマ帝国も分裂すると、キリスト教が強大化した。そのせいでこれまでの知見がおじゃんになった。」
穂高「まさにその通り。左がTO図、右がアングロサクソン図。とくに左は、エルサレムを中心に、エデンの園が存在するなど、キリスト教が大変強かったことを物語る。」
美咲「右はまだマシね。イギリスは国の発足が1066年で、それより少し前だったから。」
穂高「多分そういう理由もあるだろうが、ローマから離れていたのも大きいと思う。」
美咲「地図というより、当時のものはキリスト教の概念図だね。」
穂高「それが本質なんだよ、残念ながら。」
美咲「一方で、イスラム世界では、ギリシャ由来の知見がそのまま残っていた。イドリーシーという地理学者が書いた地図が残っている。」
穂高「アフリカからインドまでは...」
美咲「この地図は上が南になっているよ。なんででしょう?」
穂高「メッカの場所とか?」
美咲「それがなるべく上にくるように配慮したから。」
穂高「そして、大航海時代を迎えるといよいよキリスト教の呪縛を受けなくなった。」
美咲「おい、因果関係が逆!キリスト教からの解放によって大航海時代を迎え、北米や南米では古代から続いた都市文明が崩れ、欧州の植民地となっていく。一方、アフリカでは、スペインがアフリカの国々から奴隷を輸出する体制を整える。」
穂高「そんな中で、次々に新たに大陸や島が発見されるにつれて今に至る地図が完成、という訳。」
美咲「一方、本邦では、行基図が奈良時代からずっと使われてきた。」
穂高「そして、あの有名な伊能忠敬の大日本沿海輿地全図が発行された。」
美咲「この地図がらみで、シーボルト事件があったことは、日本史選択者には必須の知識。」
穂高「あと、中国の地図を紹介して終わろう。」
美咲「どんなの?」
美咲「オーストラリア以外正確!」